1.9.11

生きるとは詩的に生きること


Le chemin de l'espérance (septembre 2011)
Stéphane Hessel & Edgar Morin


第二次大戦中レジスタンスだったお二人、ステファン・ヘッセルさん (1917年10月20日ベルリン生まれ、94歳) とエドガール・モランさん (1921年7月8日パリ生まれ、90歳) の184歳コンビによる 「希望の道」 を先日読んだ。

現代世界は個別の現象が独立してあるのではなく、すべてが一つに繋がっている。例えば、核兵器の増殖、人種・宗教紛争の継続、バイオスフィアの破壊、制御不能な世界経済、お金による支配、経済・技術優先による野蛮などの問題はわれわれ一人一人を取り巻く問題になっている。この認識がこの本のベースにあり、そこからどこに向かうのかを探っている。最終的には、それぞれの人間が 「善く生きること」 ができるような社会、個人の資質が花開くように生きられる社会を目指すべきだというところに辿り着く。

そのためには、物を持つことによる満足から精神世界の充実への転換、数から質への転換、異分子排除から開かれた心 (共感、同情、心遣い) への転換などが語られている。教育についても触れられている。中学校では現代社会を取り巻く問題が地球規模になっていることを踏まえ、これまで分離されていた教科を絡み合わせて教えること。それから知識を教えるだけではなく、知識とは何かを教えること、同様にヒューマニズムを教えるだけではなく、人間とは何かを生物学的、個人的、社会的側面から教えて、人間の歴史や人間を取り巻く状況、矛盾、悲劇をはっきり意識させることが重要になると主張している。これらは哲学的視点を導入することを意味しているのだろう。

われわれが 「善く生きる」 ためには個人の持てるものを開花させることが前提になる。そして、「生きるとは、すなわち詩的に生きることである」 という言葉が現れる。これを見た時、もう5年も前に出遭っているマルセル・コンシュさん(1922 年3月27日生まれ、89歳)の言葉と重なり、嬉しくなる。人間が持っている詩的な必然性を表現することこそ善く生きることになるという考え方。そこに向けての政策を考えるというやり方。外界の変化を感知する感受性とその情報を受け取った後の反応が実にしっくりと私の中に入ってくる。



(2011年11月3日)